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米アパレルブランド”GAP”がインスタグラムに投稿した写真です。


(https://www.instagram.com/gap/から画像をお借りしました。)
まずは純粋に、美しい写真ですよね。

スライドの1枚目は、より商品の良さに視点を置いた写真。子供がクシャッと母親の胸元のシャツを掴んでいて、その軽さや柔らかさ、部屋着としてのリラックス感が出ています。
2枚目は、授乳中の写真。子供の母親に甘えきった表情と姿勢、その子を覗き込む母親の柔らかで優しげな雰囲気から、授乳がいかに母子にとって大切かが伝わってきます。

写真共に投稿されているキャプションは;

gap Love your forever favorite. Pima cotton and a secret soft wash make these sleep shirts the ones you’ll want to wear, keep, and love. Tap to shop. #LoveByGapBody

それだけ。自ブランドの商品の良さと購入方法、それにハッシュタグが書かれているだけです。

しかし、直接的には何も書いていなくても、この2枚目の投稿を見た人(特に、授乳中の女性や授乳期の母子外出に苦労した人)は、すぐに「公共の場での授乳を応援してくれている!」と、GAPからのメッセージを受け取ったと思います。

実際にコメントを見ていっても、GAPへの感謝が多く綴られており、#normalizebreastfeeding というタグも目立ちます。これは、米国で2014年頃から大きなムーブメントとなった「Normalize Breastfeeding(授乳を普通のこととして受け入れよう)」という運動のタグで、インスタグラム上でこれまでに607,000以上のタグ付け投稿がされています。

日本もそうですが、米国でも公共の場での授乳には否定的な意見も多く、社会問題になっていますよね。

「公共の場で胸を露出するのは…」という意見はよくわかります。なので、母親側も授乳の仕方に配慮をする必要はありますが、目くじら立てて否定するのも非人道的と言うか、、、乳飲み子を連れて外出しなければいけないこともあります(そもそも乳児がいるなら外出するな!なんて言うべきじゃないですしね)し、授乳室なんてそんな都合よく近場にないですから。

ちなみに、私は、大判のスカーフで隠しつつ、場所に余裕のあるベンチやカフェの片隅などで授乳していました。いろいろ思われていたかもしれませんが、授乳室に駆け込んでも混んでいたり、そもそも授乳室が近くになかったり、どうしようもなかったので。
なので、現在そんな悩みをお持ちの方にも「気にせず授乳しちゃえ!胸が見えなければ良いよ。」と言いたいところですが、、、そうはいかないものですかね?

…と、話がズレましたが、この「言葉で何も書かない」が、企業アカウントなんかだと難しいこともありませんか?
メッセージをしっかり伝えたくて、つい書き過ぎてしまったり、できるだけ露出を図ろうとしてタグを増やし過ぎてしまったり。

この投稿でも、GAPが「授乳ができる社会に」的な言葉を書いたり、そのようなハッシュタグを付けたら、どんな印象があるでしょう?
「印象は変わらない」と言う人もいるかもしれませんが、「ちょっと説教くさくなるねぇ」と言う人もいると思います。

この説教臭さが出ると、せっかくの「純粋に美しい写真」のパワーが削られ、心にスッと入ってきません。
批判する側の人にはもちろん、ニュートラルな意見の人にも共感してもらいにくくなる可能性もあるかもしれません。

もちろん、言葉で何も書かずにメッセージを伝えるには、写真の質が問われます。
でも、その写真の質をクリアして、そのチカラだけで伝えることができたメッセージは、より深く広く、人の心に届くこともあるのではないでしょうか。

ちなみに、このGAPの投稿は、現在(2018.3.13)までで45,000件近いの「いいね!」と3,600件強のコメントています。

「いいね!」やコメントをした人同士が、ふんわりと気持ちで繋がり、その一体感がメッセージに「応援する人がたくさんいる」という新たなメッセージを加えられたキャンペーン。
見る側と企業で1つのメッセージを作り上げた、ブランディング上での価値が高い施策だと思います。