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※非常事態宣言は2018.03.22に解除されました。

2018年2月、モルディブでは大統領が「非常事態宣言」を発出しました。
「非常事態宣言」というと、銃撃事件など人命に危険が及ぶ状況で出されるイメージがありますよね。

しかし、今回モルディブで出された非常事態宣言は全く性質が異なり、結論から先に言ってしまうと;

「現在のところ、リゾートに行く旅行者には何の影響もない。ただし、マーレやその他の島では、デモなどが突発することもあるので、行かない方が良いですよ。」

くらいの感じで、少なくとも今のところは“いつもと変わらぬモルディブ”です。

では、“いつもと変わらぬモルディブ”で、なぜ非常事態宣言が出されたでしょう?
それは、モルディブ現政府にっとての「非常事態」だからです。

“国の存亡”や“国民の生命の危険”ではなく、あくまでも大統領をはじめとする政府派が自己保身の危機に瀕しているということ。

詳しく書くと長くなるので端折りますが…
海外や牢獄に入れていた政敵の解放を最高裁判所が決定したことが、今回の宣言発出の最大のトリガーです。
政敵が戻って来れば、遅かれ早かれ政府は転覆し、大統領をはじめとする現政権派の中には汚職等による逮捕者も出る… という危機感から、非常事態宣言を利用して司法(裁判所)や立法(国会)の動きを一時的に&一部制限し、自政権の延命を図っているのが現在の状況だと、個人的には見ています。

モルディブは観光立国で、国の収入の多くを観光業及び関連業からの外貨収入に頼っています。
なので、政府としても観光業にマイナスな非常事態宣言などは出したくなかったのですが、背に腹は変えられぬ苦肉の策だったと言えます。

非常事態宣言と同時に政府が出した声明(抜粋)は下記の通り;

The Government assures the tourism and travel trade that all tourism related businesses will be operating as usual and the situation in the Maldives remains stable. The State of Emergency does not force any restrictions on travelling to the Maldives or within the Maldives. All international airports including Velana International Airport and all domestic airports, tourist resorts, tourist hotels, tourist guest houses, tourist accommodating vessels (safari boats), marinas are in full operation. International and domestic flights, sea plane operations and all modes of transport are in operation.

Public safety is of paramount importance and the government assures the safety of the destination.
(出典:モルディブ観光省HP

要するに「旅行には支障がない(から、安心して来てね!)」とのこと。
※上記には「モルディブ国内の旅行も制限しない」とありますが、反政府派のデモ+政府による鎮圧が繰り返されている首都マーレやその他のローカル島には、念のため近づかない方が良いとは思います。
(ゲストハウス島として有名になってきたマーフシ島にも、実は監獄がありますし、基本的には「モルディブ人が住む島にお邪魔している」という感覚はもっておくべきだと思います。彼らがデモを行いたいと思えば、止めることはできません。)

政府派も反政府派も、観光業への傷はこれ以上広げたくないと、頭と胸を痛めています。

モルディブは、本当の意味で民主主義が広がり始めて10年ほどの国。
それまでは、1人の大統領が30年ほど、司法・立法・行政のほぼ全権を握り、独裁運営をしてきました。
その時代が悪かったか?というと、様々な問題はありつつも、力強く国を発展させてきた背景の1つとして、独裁制による強権があったことも否めない気がします。

とは言え、モルディブは、その時代には戻れません。
民主化へ国民の意識が高まり、「今のままではいけない」という雰囲気が国中を覆っています。
民主主義的な国の運営を体感したことのない人々が、
着地点を手探りで求めながら変わろうとしているのが今のモルディブだと
その早過ぎる移り変わりを見ながら、私は痛みと期待と共に感じています。

…と、話はズレましたが、リゾート旅行にいらっしゃる分には、あまり怖がる必要は現在のところありませんよ。

ただ、モルディブに限ったことではありませんが、念のため、日本の外務省提供のたびレジには登録しておいた方が良いですね。
何かあった(ありそうな)時には、現地の大使館等がメールなどをくれるかもしれません。