ビデオリサーチ社とマイナビティーンズが、共同で「JK×Instagram利用クラスター」を開発したそうです。
その内容は、マーケティングやリサーチの参考になる以上に、今の女子高生のリアリティを具体的なイメージとして把握し、これからの日本社会を考える小さなヒントとして、とても興味深いです。
「JK×Instagram利用クラスター」とは?
「JK×Instagram利用クラスター」とは、ビデオリサーチひと研究所の若者研究チーム『VRわかものラボ』とティーンマーケティング支援事業を行う『マイナビティーンズ(運営元:株式会社マイナビ)』が、女子高生の「インフルエンス力」に着目して開発した、女子高生のクラスター分類で、詳細はこちらで確認ができます。
リンク先のリードには;
『マイナビティーンズ』と『VRわかものラボ』では、かねてより若者の流行の拡散源であり、未来のユーザーにつながる存在でもある女子高生に注目しており、彼女たちへの理解を深めることで企業のマーケティングへの活用、支援に取り組んできました。
(出典:https://www.videor.co.jp/digestplus/market/2018/04/9722.html )
とあります。
若者と一口に言っても、属するコミュニティによる差異が広がっている実感はありますが、共通する行動様式などもあり、非常に参考になるクラスター分類のように見受けます。
女子高生の行動特性
こちらの定量調査結果をご覧いただくと、現在の女子高生の典型的な行動がよくわかります。
(出典:https://www.videor.co.jp/digestplus/market/2018/04/9722.html)
興味を引くポイントは多くありますが、特に;
- 休み時間にすること:友達とのおしゃべり84.4%、SNSの閲覧42.8%
- 付き合う相手によって使い分ける自分のキャラの数(平均):2.4個
- スマートフォン所有率(家族との共用含む):95.7%
- スマートフォン利用時間(1日):平日237分、休日288分
などは、
「学校でも家でもスマホをでSNSを見ながらおしゃべりやチャット(オンライン)。複数のコミュニティに属し、その場に応じて最適な自分を演出している。」
という女子高生のリアルな姿が目に浮かぶようです。
調査概要を見ると「1都3県在住の女子高校生 979サンプル インターネット調査」とありますので、デジタルへの依存度などは実際の平均値と違う可能性もありますが、平均的な現在の女子高生の姿と大きくかけ離れてはいないように感じます。
7種類の“インスタ女子高生”
今回の分類では、インスタグラムを利用する女子高生は下記のように分けられるそうです。
(出典:https://www.videor.co.jp/digestplus/market/2018/04/9722.html )
1つ1つのクラスターの特徴については、こちら↓で確認することができます。
「JK×Instagram利用クラスター」7つのクラスターの特徴
各々のクラスター特性を見ていくと、呼び方は違うものの、「目立つ女子」「グループ女子」「オタク女子」など、基本的には旧来からいる女子高生像が浮かびます。
その中で、SNSの普及によって、自らのメディアを上手に使い、フェイスtoフェイスでのコミュニティの枠を大きく超えてインフルエンス力を発揮する女子高生(インフルエンサーJK:3.4%、クールJK:19.5%)が、インスタグラムのユーザーの内5人に1人以上にのぼることは、大きく注目に値するでしょう。
「自分キャラ」、使い分けていますか?
インスタグラム利用者のクラスターも参考になりますが、個人的に最も注目しているのが、女子高生全般の傾向として示された;
- 付き合う相手によって使い分ける自分のキャラの数(平均):2.4個
という点です。
皆さんは、コミュニケーションする相手によって自分のキャラクターを使い分けますか?
大人世代でも「会社の顔」「家庭での顔」「友人に見せる顔」が違うと言う人はいますが、それぞれは、どれだけ差異があるのでしょうか?
正式な調査をしたわけではないので、感覚ベースの話になりますが、女子高生の自分キャラの使い分けは、大人世代のそれに比べ、格段にキャラ間の乖離幅が大きいように感じます。
“2.4人の自分”が生まれる背景
今回のクラスター分類の詳細からも透けて見えることですが、彼女たちはコミュニティの和を乱すようなことを好まない傾向にあります。カーストのようにヒエラルキーが一度形成されると、見た目でも比較的それがわかりやすく、階層間の移動も少ないようです。
しかし、例えば、学校では自分の階層が固定されていたとしても、みんながその位置に満足しているわけではありません。裏では、自分がもっと目立てる場所への欲求、我慢していることを言いたい欲求、もっと好きなものを追求したい欲求など、様々な気持ちが渦巻いています。
そして、それらの欲求を果たす場所も、ネット上や、そこから派生するリアルなコミュニティで、見つけることができなくはありません。そこでは、学校などで抑えている別の「自分キャラ」を解放することもできますし、より自分が楽しむ・心地良くいるための「自分キャラ」を演じることもできます。
そうして、必要に迫られて演じている「自分」、なりたいと思っている「自分」、自分のメディア(SNS)を盛り上げるためなどに使える「自分」など、多様なキャラが生まれます。
その各々を上手に使い分けることが、自分の生活をより良くするベースになるので、極めて精緻にそれを行います。
男子高校生については、調査などの経験がなく、実感的にはよくわかりませんが、女子と行動様式が似ているのであれば、自分キャラの使いわけについても似ているかもしれませんね。
…それって、疲れない?
昔から「高校生をする」ということは大変でしたよね。
勉強に部活とやることが多い上に、恋愛など人間関係でもこれまでとはステージが変わりますから。
個人的な印象としては、その大変さが中学生にまで降りてきている上に、高校生の人間関係はさらに大変になっているように感じます。
実際、検索エンジンに「高校生 疲れ」と入力してみると、関連ワードとして出てくるのは;
高校生 人間関係 疲れた
高校生 友達 疲れる
女子 高校生 疲れる
人生 飽きた 高校生
高校生 人生 つまらない
…何だか、とても大変そうです。
多くの人は、そして特に若い内は、みんな寂しがり。
1人にならざるを得ない状況でない限り、誰かと一緒にいたり、誰かとチャットなどで繋がっていたいと思ったり、繋がっていないと不安になる人もいます。
しかし、「他人」という自分のコントロール外の存在と常に付き合うのは、楽なことではないですよね。
おまけに、相手や状況に合わせて自己を変えて…疲れないわけがありません。
トリセルフを見つめる大切さ
小さな頃から、学校では「あなたの夢は?」と聞かれます。
中高生になると、それは「あなたの進路は?」という質問とセットになります。
また、「友達は大切」「他人を敬うことは大切」ということも、繰り返し教えられます。
しかし、「自分を知ることの大切さ」「他人に依存せず生きることの大切さ」は、学校だけでなく家庭での教育も含め、どれだけ教えられているでしょう?
自己認識の自分はどういう人間なのか?
どんな強みや魅力を持っているのか?
逆に、どんな弱点を持っているのか?
それに対し、客観的に見た自分はどういう人間なのか?
上記の2点を参考にしつつ、自分はどんな人間になりたいのか?
最初から、もつれの少ないトリセルフを形成できる人などいないでしょう。
しかし、自分のトリセルフを見つめることで、少なくとも、自己(特に自分の強みや魅力)を常に心に留め、他人を大切にしつつも、依存し過ぎずに生きていく練習はできるかもしれません。
親への依存を脱して(減らして)生き始めることが、大人になるということですよね。
それは、依存する先を親から友人など別の他人に移行することではありません。
インターネットの利便性が広がる一方で、「1人にならざるを得ない状況」が自然には発生しにくくなっている現代。
他人に依存し過ぎないためにも、他人に合わせた「2.4人の自分」を演じて疲れ切ってしまうよりも、自分を知り、自信を持つことが大切だということが、現代の女子高生の実態データから改めて実感されます。