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米国の非営利団体「小児脳腫瘍財団(The Pediatric Brain Tumor Foundation)」の提供する小児がんの子供向けの「Imaginary Friend Society(空想友達ソサエティ)」というサービスがあります。

アニメやARアプリを活用して、子供自身に語りかけ、励ますためのよく考えられた施策は、子供のインサイトを考慮して、その心に届くメッセージを発信する参考となるでしょう。

「小児脳腫瘍財団」とは?

小児脳腫瘍財団(The Pediatric Brain Tumor Foundation)」は米国の非営利団体。

28,000人以上の小児がんと戦う米国の子供〜10代の若者その家族サポートをしており(2018.06現在)、その規模と活動の質から、世界最先端の小児脳腫瘍に関する団体と言われています。

情報提供から経済支援まで幅広い支援活動を行っており、子供向け情報提供プラットフォームImaginary Friend Society(空想友達ソサエティ)」のアニメ動画シリーズは、Webby Awardなど、複数の賞を受賞しています。

 

Imaginary Friend Society(空想友達ソサエティ)

Imaginary Friend Society(通称:IFS)のHPを見ると、まずは、ピクサーの映画作品などを彷彿とさせるような、楽しげなキャラクターたちが目を惹きます。これらのキャラクターが、難しい内容状況をわかりやすく・心に響くメッセージとして子供達に伝えるキーとなります。

THE FILMS (フィルム)

2017年には、子供向けの小児がんに関する22本もの短編アニメ動画がIFS内で提供されました。

IFSのHPで実際の作品を見ることができますが、その内容は、

  • 「癌とは?」という基本的な知識
  • 「MRIとは?」「X線治療」「脱毛」「なぜ常に倦怠感があるのか?」「長期入院」というような治療方法治療の中で直面する状況
  • 「悲しくなる」「怒りを覚える」「怖くなる」など精神面での現象
  • 「兄弟姉妹への手助け」という患者の兄弟向けのアドバイス(癌で闘病している兄弟の状況、病気の兄弟に親がかかりっきりになってしまっても悲しむ必要はないこと、病気の兄弟をどうやって助けるか、等)

などなど、極めて多岐に渡っています。

ほとんど動画では、小児がんに関する難しい用語状況を、小学校低学年くらいでもわかりそうな簡単な言葉解説し、その上で、励ますような内容です。

AR APPS (ARアプリ)

今年2018年に発表されたのは、昨年のアニメ動画のキャラクターを活用したARアプリです。

アプリを起動すると、自分の病室内にアニメ動画のキャラクターARで登場。キャラクターたちは、

  • MRIの前に「You are stronger than you know. I wish I was that strong. (君は自分が思っているより強いよ。僕も君くらい強くなりたいよ。)」
  • 手術や放射線治療など大きなことの前には「Never give up, Kid. Never give up (諦めちゃダメだよ。絶対にだよ。)」

など、子供たちが不安になる場面では声をかけ、治療への精神的な後押しをしてくれます。

これは、お金の寄付ではありません
IFSでは、自分の考えたキャラクターIFSに提供することを「寄付」と呼んでいます。
(お金に寄る寄付も受け付けていますが、財団の紹介ページの下にリンクされているだけです。)

IFS公式の寄付ページを開くと、そのページから自分の描いた絵(紙などに描いたモノを写真撮影するだけでOK)をアップロードし、送る(=寄付する)ことができるようになっています。寄付された絵は、IFSのHPで紹介されるだけでなく、人形ポスター塗り絵日誌など、小児がんの子供たちを勇気づける活動に利用されます。

公式HP以外にも、TwitterFacebookInstagramの公式チャンネルに「#ImaginaryFriendSociety」のハッシュタグをつけてイラストを投稿することでも「寄付」ができます。

他人が描いた絵を見るのも楽しいでしょうが、もし自分の描いた絵が人形やポスターなどになったら、どれほど嬉しく、どれほど勇気づけられるでしょう。

また、家族や友達が自分のために絵を描いてくれて(或いは、一緒に絵を描いてくれて)、それを目の前で一緒に投稿してくれたら、どれほどワクワクするでしょう。

長くてツラい治療生活を乗り越えるためにも、また、身体の免疫力を高めて癌と戦うためにも、患者が心から笑顔になれるこのような施策の意義は計り知れません。

 

3つの優れたポイント

Imaginary Friend Societyの優れている点は何でしょう?

多くの点が挙げられるとは思いますが、大きなポイントとしては;

  1. 見る人のインサイトを最重視したコンテンツ
  2. 商業作品に引けを取らないクリエーションの質
  3. 子供が独りで入り込みやすい媒体(アニメ動画やアプリ)の活用

という3点でしょう。

「1. 見る人のインサイトを最重視したコンテンツ」は施策の隅々にまでしっかりと貫かれていて、とにかく「子供をコンフォートする(気持ちを落ち着けて、居心地の良い状態にする)」ことを第一に考えていることが強く伝わってきます。

例えば、伝える情報を欲張り過ぎてわかりにくくしてしまったり、正確性を重視し過ぎることで閲覧者(≒子供の患者)の気持ちを大なり小なり引っ掻いてしまうことは、特にこのようなデリケートなテーマではありがちなのではないでしょうか。

その点、Imaginary Friend Societyのコンテンツは「子供をコンフォートする」という最終目標(閲覧者へのベネフィット)から一切ブレず、その点においては細部まで行き届いているように感じます。

また、クリエーションの質の高さも、子供が「本気で見る」ためには重要なポイント。
商業作品のアニメを見る時のように、気持ちを集中させ、夢中になって見てもらうことなしに、彼らの心の中深くに入っていくことはできないでしょう。

 

「覚悟」は、独りでしかできない

3. 子供が独りで入り込みやすい媒体(アニメ動画やアプリ)の活用」には、2つの大切なポイントが含まれています。

それは、「独りで」と「入り込みやすい」という2点です。

受け入れがたい状況を受け入れて、難しい「覚悟」するためには、大人でも子供でも、独りで集中して考える時間が大切になります。

他人との時間は極めて大切ですが、決断や覚悟をする際に誰かが目の前にいると、話している内容だけでなく、その人への感情が頭と心の幾分かを占めます。親兄弟、親しい友人には、甘えたくなるかもしれませんし、そうでない人の前では、子供であっても体面を保ちたい気持ちが心を占めるかもしれません。

癌のような難しい状況においては、自分の状況を理解し、向かい合い、不公平感・怒り・悲しみなどを飲み込み、諦めることなく納得し、覚悟をするということを、何度も何度も繰り返さなければいけないでしょう。

それは、他人に対する甘えや反感、体面などの感情をもったままでできるような、生半可なことではありませんよね。他人との時間を大切にし、それに癒されつつも、独りの時間に冷静に考え自分自身を説得することが重要になってきます。

その点で、アニメ動画やアプリなどは、独りの時間有意義に埋めつつ、その時間がネガティブな方向に向かわないよう手助けをしてくれるこかもしれません。

独りの時間に、知るべきこと改めて学び考える時間を持つことは、身近な人たちと一緒にいる時間と同等に大切だと言えます。

 


 

数ヶ月も、或いは、数年にわたることも多い癌治療。
多くの子供たちまでもがその運命にあることは、考えるだけで胸が締めつけらます。

IFSのように、小児がんの子供やその家族のインサイトに深く配慮し、寄り添ってくれる施策の意義は極めて大きいでしょう。

同時に、子供たちに「わかりやすく・伝わりやすく」メッセージを届けるためのポイントを教えてくれる優秀なコミュニケーション例の1つとしても、IFSの施策は今後も注目に値するでしょう。