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独立行政法人中小企業基盤整備機構(SMRJ)の「社畜ミュージアム」という、笑えるような笑えないような、よくできた動画があります。ご覧になりましたか?


動画の公式解説がコチラ↓。

「社畜あるある」を美術館で紹介するWEBムービー。
【進捗モンスター】(彫刻)
暇そうな上司から「進捗どう?」と毎日詰められ、爆発寸前の社畜社員。
【寝てない自慢大会】(油彩)
「昨日 3 時間しか寝てないわー」「オレなんて 2 時間だし」など睡眠時間を競い合う大会。
【居残り部長】(油彩)
上司が深夜まで帰宅しないため、会社から脱出できない部下たち。
(出典:https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=V35knsZr2GM )

上記の3つ以外にも、遠い目で「あるよねー」とつぶやいてしまうようなシーンの連続に
あ、あれ? 僕/私って社畜?
と、背筋が寒くなる方もいらっしゃるのでは?

 

“社畜”という言葉を使うかどうかは置いておいて、動画で挙げられている例のように企業や組織で働いていく上で陥りがちな袋小路の多くには“トリセルフのもつれ”があるように思います。

そして、その“もつれ”は、忙しさ(≒考える時間や自己成長のための時間等の欠如)から、さらにもつれ、長引くほどに抜け出せなくなる… という傾向もあるでしょう。そこまでいくと、場合によっては心の病を患ったり、その先の事態まで引き起こしてしまうこともあるように思います。

 

例えば“寝てない自慢大会”。

多くの場合、“自慢大会”のベースにあるのは、「1時間しか寝ていない」という“客観の自己”の枝葉末節を「優秀」「頑張っている」「会社に貢献している」「イケてる」等の誤った“主観の自己”へ誤訳してしまう集団心理です。

それにより、“理想の自己”が実現できていると感じていても、それは“的外れな満足”ですので、いずれ魔法が解けて、不満に転ずる不安定さを秘めています。

唯一、「イケてる」は、“寝てない自慢大会”の参加者の中では誤っていないかもしれませんが、世間に一歩出ると誤りとなります。その大会が催される環境に一生を埋める気で、その環境も一生安泰なのであれば良いでしょうが、そうでなければ、やはり“的外れな満足”と言えます。

そして、その「世間に一歩出る」ための「時間がない」場合が、極めて深刻と思われます。
「時間がない」あるいは「時間がないと思い込んでいる(or自分を騙している)」ことは、上記のような袋小路にハマり、抜け出せなくなっていく悪循環の大きなファクターとなり得るからです。

思考停止には、中毒性があります。

中には、寝てないだけで「イケてる」と思い込める環境が心地良くなってしまったり、無意識の内に世間の価値観に戻ることに怯えていたりなど、抜け出すことを求めなくなる人もいるでしょう。
そんな場合でも、そもそも身体がもたないかもしれませんし、身体が壊れると心にも影響が出かねません。また、自己欺瞞による“的外れな満足”は、いずれふと我に還り、不満に変わる可能性もありますから、ずっとその調子で仕事をしていくことは多くの人にとってリスキーと言えるでしょう。

 

では、その社畜カルチャーを組織が払拭したり、個人が抜け出すためには、どうしたら良いでしょう?

 

組織側の働きかけとしては、組織自身のあるべき“理想の自己”を、働く人たちなどその構成員に徹底して啓蒙することがまず第一歩でしょう。

社畜カルチャーは、組織の側の意に反して働く側が作り出してしまっている場合もある(例えば、業務の成果に関係なく、「寝てない」=「イケてる」とされる方が楽な人もいますから)ので、骨の折れることだと思います。しかし、「組織が求めるのはこういう人」という明確な像の打ち出しと、それを満たすことが自身の利益にもなるという構成員の理解なしに、社畜カルチャーの掃討は難しいように思います。

また、個人が抜け出そうとする場合には、「抜け出そう」と思えた時点で、まずは“トリセルフのもつれ”に気づいているのでしょうから、希望がありますよね。「寝てないからって、イケてるわけでも会社に貢献しているわけでもない」という客観視ができているのですから。

そのステージにあるのであれば、あとは「考える時間」と「実行」だけではないでしょうか。「そのカルチャーから自分だけ身を離して、別の頑張り方を今の組織でしてみよう」でも「このカルチャーそのものをぶっ壊そう」でも「もうこの組織は見限ろう」でも、考えて出した答えに勇気と計画をもって実践するだけだと思います。

個人的な経験としては、、、1つの職場を去って失うものありますが、「違うなぁ…」と思う職場に1日8時間以上を過ごすことで失っているものもありますよね。それらを冷静に比較・判断して自分のワークスタイルを確立することはできるように思いますよ。独立でも転職でも後悔するシーンは出てくると思いますが、同じ職場にい続けても後悔することはありますから。
いずれの道を選ぶにせよ、考える時間と余裕を確保して、判断することが大切だと思います。

 

余談にはなりますが、私自身は、いわゆる社畜カルチャーを全否定する気にはなれないんですよね。

“居残り部長”的なカルチャーは無意味だと思いますし、組織の側が、働く人の人権を無視して何かを強制する断れない雰囲気を作るなら、それはまさに“社畜”。最悪です。

しかし、起業から間もない会社だったり、全身全霊を込めてやりたいプロジェクトを進めていたり、そういう場合に、“トリセルフのもつれ”もなく「やりたくてやってる!」というのであれば、それを労働時間等の上辺だけ取り上げて“社畜”とは呼ぶのは違うかな?と。
ごまかしのない自分の意思でやっているのであれば、誰に飼われているワケでもないですよね。体力が尽きてきたら、休むことは大切ですけれど。

私自身も、成長過程のベンチャー企業に身を置いていたことがあります。
私も含めてオフィスに寝泊まりしながら働いている人もいましたが、誰も“社畜”ではなかったように思います。

当時の同僚は、それを「ジェットコースターに乗っているみたい」と表現していました。

高速で駆け抜けている間は、逆風で目も開けられない、周りも見えない。
てっぺんに到達した時、ふと景色が開けて「こんな高みに来たんだ」と息を飲む。
その景色に胸を打たれるのも束の間、また、ジェットコースターは逆風の中を高速で走り始める。
そういうことの繰り返しだけれど、てっぺんの景色の気持ち良さを思うと、無理を押しながら頑張ってしまう

そんな風に言っていた気がしますが、正に、そういう状況だったと思います。

なので、働き方だけで“社畜”とは言えないし、そのようなパワーがイキイキとした経済発展の大切な要素の1つだとさえ感じています。

 

ポイントはトリセルフのもつれ”がないこと。
しっかりした意識と意思でやっているか?ということ。

適切な“理想の自己”を組織と働く人が共有できており、“客観”と“主観”にも乖離が少なければ、どんな働き方も“社畜”とは言えないように思います。

くれぐれも心身の健康には気をつけつつ、多様な働き方を認めていきたいですね。