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ネットで炎上してしまう人が後を絶ちませんよね。

いわゆるバカッター的な投稿は論外ですが、ツイッターやインスタグラムなど投稿のハードルが低いSNSでは特に、ふと思ったことや写真を投稿しやすい反面、発言の背景などを深く伝わらず言葉の一部や写真だけが一人歩きして炎上、、、なんてこともあります。また、ネット外の出来事が、SNS上で盛り上がって炎上してしまうことも。

そういった炎上の処理法も様々ですが、想定外の自分への批判や中傷に焦ったり傷つき逃げてしまう、あるいは、火に油を注ぐような言い訳をしてしまうことも少なからずあるように思います。「逃げる」「言い訳をする」で鎮火しないとわかっていても、ネットの批判は時に辛辣過ぎますし、批判する側のストレス解消の道具とされたり、イジメのような様相を程したりすることもあるので、精神的な限界に達して逃げてしまうのも理解できます。

 

一方で、そのような炎上地獄に落ちても、やられっぱなしでは終わらない人々もいて、その信念メンタリティの強さには、感心+尊敬の念を抱かずにいられません。

 

後で例示もしますが、そのような人たちに共通する第一段階めの特徴として「批判で自分を曲げない」ということがあるように思います。

何を言われても気にしない、または、気になるけど変えない
筋の通った批判以外は相手にしない冷静な方、そもそも他人の言うことは気にしない(気にしないよう心掛けている)個人主義の方、「批判する人がいても、支持してくれる人もいるし。何より自分で自分を支持しているし。」という最強の心理状態の方もいらっしゃるように見受けられます。

そして、上記の第一段階をベースに「炎上したネタをさらにフィーチャーしてくる」という第二段階が加わって初めて、炎上に屈しないどころか炎上を好転させるダイハードになれると、個人的には分析しています。もちろん、この第二段階でさらに炎上する人もいますが、これができる時点で、少なくともメンタルの強さ(あるいは鈍感力)だけは尊敬に値する気がします。

 

例えば、レオ・ベイン(Leo Bane)という人気コスプレイヤー兼フィットネスモデルは、セイラームーンのコスプレで炎上したそうです。↓
This ‘Sailor Moon’ Fan Doesn’t Care He Loses Followers by Posting His Drag Cosplay

彼は人気ドラマやゲームの筋肉ムキムキの男性キャラクターのコスプレで人気を博していたそうですが、突如としてセーラームーンに変身。そのムキムキ感とセーラー服+ハイヒールのミスマッチに多くのファンが「気持ち悪い…」「変態かよ!」と大騒ぎをする阿鼻驚嘆の事態だったそうです。

確かに、彼のインスタグラムフェイスブックを見ると、男臭い写真の中に、ある時点から突然ムキッとし過ぎたセーラームーン(ネプチューンというキャラらしいです…)の写真がチラホラ。そしてフォロワーも激減していったそうで、自分のコスプレにファンがここまで批判的とは思ってもみなかったような雰囲気も、彼のSNSからは感じられます。

しかし、覚悟を決めた彼は、セーラームーン(ネプチューンか…)の写真を投稿し続けて、こんなことを言っています。↓


このコスプレの写真を投稿する度にフォロワーを失っていることは知っている。いいかい? 僕はこれを続けるよ。固定観念に囚われた人たちを失ってはいるけど、クレイジーな奴らと心の開けた戦士だけが僕の欲しい戦友だからね。
(出典:https://www.instagram.com/p/BfoOP__ByG7/?hl=en)

そして、セーラームーン(ネプチューン…)の写真と前向きなキャプションを投稿し続けることで、戻ってきてくれたファンのみならず、新たなファンも増え、彼のセーラームーン(ネプチューンね…)関連のインスタ写真の「いいね!」は約4,000〜6,800件、コメント数も150〜270件ほどで、他のコスプレ投稿よりも格段に反応が高くフォロワー数も22,600人ほど(2018.03.25現在)となっていました。

その全体の流れを見ると、第一段階として、まず彼は「信念があってやっているのだ!」と自分を曲げませんでした。この炎上初期の時点での“客観の自己”は、言うのも大変申し訳ないのですが「変態」とか、そんな感じだったと考えて良いでしょう。そして、第二段階として、自分のセーラームーン(ネプチューン)コスプレを強力にプッシュし続けました

結果、自分を取り巻く批判を跳ね除け、“客観の自己”を「変態」から「クレイジーで面白いヤツ」という“自認の自己”兼“理想の自己”に近付け、“妥当な満足”の状況までトリセルフを持ってくるという力技をやってのけました。その成果が、SNS上での彼への支持を示す各数字に表れていると思います。

 

このように、炎上とは、好ましくない“客観の自己”を厳しく世間から突きつけられる事態で、“トリセルフのもつれ”を本人に対しても世間に対しても顕在化させます。
上記では個人の例を挙げましたが、これは企業など組織のアカウントが炎上した場合にも、それが炎上マーケティングでない限り(わざと炎上させているのでない限り)、同じと考えられるでしょう。

なので、その“トリセルフのもつれ”をどう調整し、どう世間にフィードバックするか?が炎上処理のポイントとなります。

具体的な例を挙げるのは差し控えますが、構造としては、下記のような感じが一般的ではないでしょうか。

例えば、優等生キャラの人の不倫が発覚すると、そのギャップから炎上具合が大きく「ダメ人間」のような極端なの烙印を押されてしまうことがあります。これが、そもそもダメなキャラで認知をされている人であれば、そこまで燃え上がらないのでしょうが。

そこで、よく見られるのは鎮火案Aのような対応です。しかし、リカバリーのギャップが大き過ぎて(上記例で言うと「非常識なダメ人間」から「好感度の高い優等生キャラ」の落差が大き過ぎて)、上手くいかなかったり、時間がかかってしまったりする例が多いように思います。

これを例えば、鎮火案Bのように、“客観の自己”に“主観”と“理想”を寄せてしまう(押されてしまった烙印から遠過ぎないポジティブな自己にイメージ変更をする)という戦略を取れば、比較的リカバリーが早くその後の無理も少ない(炎上内容が何をしても消えませんが、再燃の火種になりにくい)ように思います。いろいろな事情があって、こちらを選択する例は少ないのでしょうが、少なくとも早期の鎮火に主眼を置くなら、鎮火案Bの方向性の方が有利と考えられます。

※事例のレオ・ベインも鎮火案Bですね。炎上前の「男前キャラ」という憧れ対象になるような正統キャラクターを、「クレイジーで面白いヤツ」という「変態」からの距離感も近い親近感のあるポジティブなキャラクターに変更することで、比較的早期の鎮火に成功しました。

 

同じ構造は「企業の上層部の方がツイッターでうっかり発言」のような炎上ケースなどを含め、広く当てはまると思われます。SNSで地が出てしまった後に、例えば立派な経営者などのキャラクターに戻すことは重労働で、むしろ親近感を与えるようなキャラクターにブランディングし直す方が良いケースもあるかと思います。

そもそも無理なキャラクター出しをSNS上でしていても、見破られてしまうことがありますよね。そうなると、せっかくSNSを利用しているのにフォロワーなどとの心の距離感が縮められないどころか、炎上が一旦収まった後も「アレを言ったアノ人」という世間の印象・記憶はアップデートされず、何かがある度に「アレを言った人(の会社)だから」と火種がくすぶり続けることになり、非常にもったいないようにも思います。

 

ちなみに、先ほど炎上に負けない人たちの第一段階の特徴として「批判で自分を曲げない」という点を挙げましたが、「謝罪をしてから盛り返す」というケースもあります。また、食品の異物混入など「早い謝罪と信用回復」しかほぼ選択肢がない場合もあります。

しかし、基本的には、ネット炎上を鎮火させるために謝罪をしても効果は薄いことが多いように見受けられます。
なぜなら、炎上には“敵意帰属バイアス”と“正義感”が絡んでいることが多く、炎上を盛り上げている人を納得させるような妥当な謝罪は、大抵の場合は困難だからです。

敵意帰属バイアス”とは、何てことない事柄にも「自分や関係するモノ・コトへの敵意」を読み取ってしまう認知の歪み。例えば、偶然足を踏んでしまった相手に「わざと踏んだ!」と激怒して突っかかるような心の状態のことです。
「自分に悪意がある」等の思い込みで攻撃(先方は“反撃”と思っている)してきている相手なので、「あなたに悪意があって言いました(やりました)」と謝ることを期待されています。しかし、そんな歪んだ謝罪することはないでしょうから、何を言っても相手にとっては期待外れで、火に油を注ぐだけに終わってしまうでしょう。諸々の説明言い逃れとしか認識されず、言葉を重ねれば重ねるほど、炎上し続けます

また、正義感で炎上をさせてくる相手は「自分が正しいことをしている/相手は悪だ」という主観で攻撃をしてきますから、謝ったところで「やはり私は正しいことをしている」と相手が潰れるまで攻撃しようとすることもあります。なので、やはり謝罪は相手のやる気をさらに煽る「火に油」としかなり得ない傾向があります。

例えば、上述のレオ・ベイン氏が、1つめのセーラームーン(…ネプチューンか)の投稿を削除して「ファンの皆さんのイメージを壊してゴメンなさい」と言ったとしましょう。敵意帰属バイアスの強い人は「あの写真が自分を傷つけた事実は消えない!」と騒ぎ続けるかもしれませんし、正義感で叩いている人は「変態だって認めたなら引退しろ!」と騒ぎ続けるかもしれません。おそらく、何のポジティブな結果も得られなかったでしょう。

炎上を盛り上げているのは一部の人ですが、彼らが騒ぐと、届けたい人届けたいメッセージ届かなくなることがあります。
なので、謝罪の有無も含め、炎上を盛り上げている人たちの“敵意帰属バイアス”と“正義感”をできるだけ刺激しない方法で、“トリセルフのもつれ”に対するフィードバックを世間に届けることを考えるべきでしょう。

 

いずれにせよ、炎上処理は、タイミングの早さ対応内容の精度が求められる、非常に難しい仕事ですよね。

しかも、自身は気をつけていたとしても、取引先からの貰い火など、コントロールしにくい事態もあります。

そのような場合にも、自分自身なり組織なりのトリセルフを素早く把握し、適切な対応を心がけたいものです。