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アコールホテルズとはフランス資本の国際的なホテルチェーン。
ラッフルズ」「フェアモント」「ノボテル」など、傘下のホテル名を知らない人は少ないでしょう。

そのアコールホテルズが展開しているキャンペーン広告が非常に美しく、心を打つ内容です。

 

「From the Heart」キャンペーン

アコールホテルズが展開している「From The Heart」というキャンペーンの動画をご覧ください。

以下、ナレーションの書き起こしてみました。

“From the Heart” does not read from a training manual. It’s completely spontaneous and off script.
“From the Heart” listens, not pretend listens, but actually listens.
“From the Heart” is personal, a one-of, not just another copy and paste job.
“From the Heart” can be faked, it’s genuine and sincere.
“From the Heart” stays with you, and leaves you thinking “I cannot believe they actually did that for me!”
AccorHotels, From the Heart.

仮訳をつけると下記の通り;

「心から」とはトレーニング・マニュアルからは読み取れないもの。完全に自発的で、台本にも載っていない。
「心から」とは聴くこと。聴くふりをするのではなく、本当に聴くこと。
「心から」とは個人的なこと。たった一つの、単なるコピペではない行動。
「心から」とは偽ることができない。正真正銘の本物で誠心誠意のもの。
「心から」とはあなたに寄り添う。そして、「私のために、こんなことをしてくれたなんて信じられない!」という想いをあなたに残す。
アコールホテルズ、心から。

情緒的な映像と心に響く言葉音楽。ドラマの大切なシーンを切り取り、1つの群像劇としてコラージュしたような、短いのに見応えのある美しい作品に仕上がっています。

動画の副題は「The Only Way We Know」。
アコールホテルズのホスピタリティは、従業員一人一人が「心から」行動することにのみ生まれ、マニュアル主義のホテルとは一線を画しているということを伝えています。

また、動画の内容を分割した短いバージョンの広告動画もあり、グループ内の各ブランド名を冠してTV等で流されているそうです。

 

誰の心を動かす広告か?

ホテル業のようなB2Cビジネスにおいて、通常、広告とはC(顧客や見込み顧客)に向けて展開されます。

今回の「From the Heart」の一連のキャンペーンも顧客層を意識したものです。

しかし、そのメッセージは、ホテルを含むホスピタリティ業界全般はもとより、彼らのパートナーである旅行業界からも広く共感されるものでしょう。

また、アコールホテルズの各現場で働く人たちへの敬意も感じられる内容で、彼ら一人一人が、自分の仕事にプライドをもって働く後押しをしてくれる広告と言えます。

同時に、アコールホテルズのホスピタリティとは何か?を、各ブランドの管理職層も含めた従業員たち全般に改めて印象付ける内容は、ある種の公開トレーニングと言っても良いでしょう。

 

売り上げを作る人を動かす広告

B2Cビジネスの売り上げは、当然、顧客に源泉があります。
しかし、その間には、自社の様々な部門のスタッフや取引先のスタッフたちが多く関わっている例も少なからずあるでしょう。

大手ホテルの売り上げとは、その最たるもので、取引先である旅行代理店やホールセラーから顧客へ推奨してもらうこと、そして何より、現場で顧客にサービスを提供するレセプショニストやコンシェルジュ、ドアマン、荷物係、ハウスキーパー、レストランの従業員など、その他多くのスタッフ一人一人の働きにより、顧客満足度が大きく左右され、売り上げに影響をするという構造になっています。

今回の「From the Heart」というキャンペーンの狙いに、どこまで自社のスタッフ取引先があるかはわかりませんが、彼らの共感を得て、販売を後押しするような広告は、使い方によって中長期的な売り上げ貢献が見込める施策だと考えられます。

 


 

接客」というものの本質を捉えた今回のアコールホテルズのメッセージは、ホテルなどの接客ビジネスに直接的・間接的に関わる多くの人の心に響く内容のように感じられます。

目の前の仕事に追われて、本質が心の片隅に追いやられてしまうことは、誰にでもありますよね。

このような美しい映像で、それを押し付け感なく思い出させてくれる広告は、長く広く組織の内と外に展開される価値があるかもしれませんね。