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ECが浸透した現在でも店頭購入比率が高い商品カテゴリーは多々ありますが、それに関する興味深い記事が掲載されていました。

女性は「妄想」と「言い訳」でモノを買う?デジタル施策と店頭を融合させる最新マーケティング手法とは

詳しくはリンク先でご確認いただくとして、ポイントを抜粋すると;

彼女たちがECよりも店頭購入を選んでいる理由は、ライフワークバランスを重視しておりプライベートの時間に比較的余裕がある、アクティブで友人や家族との外出(ショッピング)を好む、消費にこだわりがあるため自分の目でしっかり吟味したい、といったインサイトによるものなのです。
(出典:https://markezine.jp/article/detail/28121)

いわゆる“リア充”の方が店頭での購入を好み、情報収拾〜購買〜情報拡散と購買前後のデジタルの利用に積極的なようです。

そもそも店頭におけるマーケティングに必要なのは購入への“最後のひと押し”をサポートすることです。女性がモノを購入する際の“最後のひと押し”になるのは「スペック」よりも「妄想」(※)と「言い訳」です。ビジュアルによりその商品がある生活を「妄想」させ、「トレンドだから」「みんな使っているから」という「言い訳」を用意しておくことが重要です。(注:※参考記事:https://markezine.jp/article/detail/27755)
(出典:https://markezine.jp/article/detail/28121?p=2)

「店頭で必要なのは“最後のひと押し”」は旧来から変わらぬことですが、企業から顧客へのコニュニケーション手段が多様化する中で、店頭をショールームではなく販売の場所として強化していくならば、より大切になってきているポイントと言えます。

ちなみに、日本のEC化率は;

(出典:平成 28 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査))
上記の経産省のデータによると、日本国内の物販のEC化率は5.43%


(出典:http://iabsverige.se/wp-content/uploads/InternetTrends2017Report.pdf)
上記のIAB Swedenのデータによると日本のEC化率は約7%
韓国:約18%、英国:約15%、中国:約15%、米国:約11%、ドイツ:約8%、フランス:約7%に次いで、僅差での7位となっており、順位よりも上位4カ国の50%以下しか普及していないことがわかります。

いずれにせよ、まだまだ伸びしろがある販路であること(しかも、まだ急激に伸びる可能性があること)は歴然と言えます。

ちなみに、アパレルブランドの“ネクスト”は、「英国での店舗に関しては、ショーケースとしての価値を大幅に認めた上での販売計画を採用している」という話を聞いたことがあります。つまり、店頭での実売上だけで損益を見るのではなく、ECへの貢献を加味して判断するので、売上が十分でなくても店舗を存続させることがあるということです。
販促やブランディングの観点から同様の判断をしている企業は少なくないと思いますが、どれだけ「ECへの貢献を加味」できるか?は難しい議論でもありますよね。

また、冒頭の記事に指摘されているポイント以外に、私が「店頭」の可能性として感じていることとして「商品選定&購買のプロセスを楽しむ」という日本人に強い特性があります。一部の日用雑貨を除いて、主だった欧米諸国の人々よりも、日本人がこの傾向を示すカテゴリーは比較的多いように感じます。

情報を集めて、比較検討をして、より自分に合ったものを見つけた!という購買前の宝探し的なワクワク感と、購買後に「どうだったか?」という成果を皆んなに共有したいという願望。その全体を一連の行動として楽しむ傾向があるように思います。

以前、「謝礼も発生しないのに、日本人が口コミをネット投稿する理由がわからない」とフランス人のマーケッターの方から言われたことがあります。「悪い口コミや極端に良い口コミなら拡散したい気持ちもわかるが、日本はそうとも限らないでしょ?」と。調査結果では「自分も参考にしている御礼として」などのコメントが得られていたのでそれらを紹介はしましたが、フランスとの国民性の違いか、ストンッと腹には落ちないご様子でした。

実際に、情報収拾〜購買〜拡散までを一連で楽しむ人が少なからずいる「思い入れの強い商品カテゴリー」では、拡散(=世間への結果報告)とできれば「役に立った」などとクリックしてくれることまでが楽しいので、謝礼は必須ではないのでしょう。言葉では「自分も参考にしている御礼として」などという表現になりますが、自分が楽しむためにもやっていることのなので。むしろ、その「思い入れ」の熱に燃料を注ぐブランド施策などの方が有効かもしれません。

そのような日本人にとって、また、「思い入れの強い商品カテゴリー」を扱っている企業にとって、店頭はこれからも価値を変えつつも、価値を失うことはないように思います。それは、自社流通の店頭でも卸先でも、顧客との接点である限り同じことが言えるでしょう。

その点を考え合わせると、冒頭の記事のように「購買理由を与て、購入への最後の一押しをする」をするということと併せ、「リアルな場のワクワク感の提供」が、これからの店頭を考えるキーだと感じます。

例えば、未だにお客による店頭での写真撮影を禁止または制限している企業があるそうですが、そのメリット(或いは、制限を解除することのデメリット)は、どれだけあるのでしょう?
デメリットが大きい場合もあるでしょうから解禁すべきとは一概に言えませんが、解禁することのメリットを鑑みて見直しても良い場合や、制限の仕方を変えても良い場合もあるのではないでしょうか。

ワクワクしたらシェアする。
そんな今や「普通」の行動に制限をかけて、「情報収拾〜購買〜拡散」という楽しい流れに水をさすことは最小限にしたいですよね。

特に、日本は社会の成熟化に伴い、「丁寧に暮らす」という価値観が一層広がっていると、様々な行動者調査を通じて感じられます。

これは、社会全体の変化としてだけではなく、10代後半〜30代前半くらいの比較的若い人についても同じ。彼らは「消費に意欲的でない」「お金を使わない」という言われ方をすることがありますが、よくよく話を聞いていくと、「お金を使いたくない」のではなく、「使う対象」を絞り、自分の生活スタイルにあった「使い方」を「楽しんでいる」と捉えられることがあります。私は、男性対象の調査を扱うことが少ないのですが、周囲の若い男性には、共通の特性が見て取れます。

例えば、内容は実例ではありませんが;
「普段はGUで服を買うことが多いけど、インスタで見たこのバッグと自転車だけはアウトドア愛があるから絶対に欲しいんだ。どの色が良いか?とか、ネットでもお店でも見ているんだけど。」
と、高額の商品の名前を挙げるような文脈での発言は、10年前には少なかった印象ですが、今は比較的よく聞く話の流れになりました。

ECは今後も伸びます。
しかし、モノの手触りや、店舗の空気感、販売員など人の温かみなど、リアルではないと提供しにくい価値も、少なくとも現時点ではまだ多くあります。

その価値と購買をいかに結びつけるか。
ECに劣らない利便性をいかに実現するか。
ECとの相乗効果をどのように生み出すか。

SNSの定着化と共に、シェアしたくなるワクワク感への渇望は高まる一方ですよね。
なので、まだまだ店頭を面白くする可能性は尽きないように思います。