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ユニリーバ社のブランドDove(ダヴ)の「リアルビューティー・キャンペーン」、ご存知の方も多いでしょう。2004年から15年近く続く人気のキャンペーンです。

中でも、こちら↓の動画を覚えている方も多いのではないでしょうか?

動画の中で、長年、警察で似顔絵捜査に携わってきたプロの絵師が2つの似顔絵を描きます。

1つは「自分自身に顔の特徴を説明してもらって描いた似顔絵」
もう1つは「他人がその人の顔の特徴を説明して描いた似顔絵」

女性たちは「顎が大きい」等と自分の顔を説明しますが、他の人たち(知り合いではなく、その場で会った人たちなので、純粋に第一印象で答えている人たち)は「すっきりした顎のラインが素敵」等と説明します。完成した2つの似顔絵を見て、“主観の自己”よりも美しい“客観の自己”に、被験者達は気づかされます。

「女性は自身の容姿を過小評価している」という事実を、似顔絵捜査の手法で明らかにしたこの動画は、多くの人の心に響き、240万回以上視聴されています(2018.04.02現在)。

上記の動画を含め、「リアルビューティー・キャンペーン」キャンペーンは、ダヴのブランド・ミッションをストレートに反映したものとのこと。そのミッションとは;

美しさは不安の種ではなく、自信の源であるべき。そう考えるダヴは、世界中の女性が容姿への自信と自己肯定感を高め、自身の可能性を最大限に発揮できるようにするために取り組んでいます。
(出典:https://www.dove.com/jp/stories/about-dove/our-vision.html)

(英語の元メッセージの方が表現が柔らかく、心にスッと入ってくるかもしれませんね。↓)

We believe beauty should be a source of confidence, and not anxiety. That’s why we are here to help women everywhere develop a positive relationship with the way they look, helping them raise their self-esteem and realise their full potential.
(出典:https://www.dove.com/us/en/stories/about-dove/our-vision.html)

また、このメッセージを発するに至った背景には、以下の調査結果があるそうです;

ダヴの世界的な調査により、以下の事実がわかりました。

自分を美しいと思っているのは、世界中の女性のわずか4%に過ぎず、容姿に対する不安は、子供の頃から芽生えています。

10人に6人もの少女たちが、さまざまな活動を ― (水泳、スポーツ、登校、そしてただ発言するだけでさえ )、自分の外見が好きでないという理由で諦めてしまっています。
(出典:https://www.dove.com/jp/stories/about-dove/our-vision.html)

女性なら、誰しも感覚的にもわかる気がしませんか?

コチラにも書きましたが、客観的に見ると素敵な女性が街中には溢れています。
しかし、「私ってキレイ」と心から自認している女性は、その中の何割でしょう?
例えば、渋谷で無作為抽出した女性100人に聞いてみても、もしかしたら0人かもしれません

容姿に対する不安は、子供の頃から芽生えています」という点も実感として想像に難くありませんよね。
例えば、「(持ち物や服装ではなく、その本人が)かわいい!」「美人!」と言われる(思わされる)経験が、小学校で「ブス!」「デブ!」と言われる(思わされる)経験に比べて多い人なんて、どれほどいるでしょう?
そういった子供時代の自己否定感は、大人になっても潜在意識に根深く残り、人生に影響を与えるとも言われています。

また、日本を例に取ると、女性が「キレイ」と言ってもらえるシーンはさらに少ないのではないでしょうか。

「海外デビュー」なんて揶揄されたりもしますが、留学や仕事で海外に出た女性が、自分に自信を持ち、キレイになることがありますよね。
欧米では、まだ黄色人種への差別もありますが、それ以上に(と言うか差別と「付き合いたい」は観点が少し違うようで)日本人女性はモテることが多い気がします。日本にいたら「普通」の女性が、いろんなところで「キレイ!」「好き!」と言ってもらえることがあります。男性だけでなく女性が「あなたはステキね」と言ってくれることもあります。

いろんな意図でそう言ってくる人がいるので、一概に日本が良い・悪いとは言えませんが、少なくとも容姿を認められる経験が「私、悪くないかも?」程度に、あるいは、それ以上に女性に自信を与えてくれることは確かでしょう。そして、その自信が表情や所作発言ファッションメイクに現れ、客観的に見てもキレイになるのだと思います。

この日本人女性の“美しさ”に対する自己評価の低さは、下記の調査結果にも現れています。

「ダヴによる少女たちの美と自己肯定感に関する世界調査レポ―ト(2017年)」によると、日本の10代の少女たちのうち、自分の容姿に自信をもっている人はたった7%。これは、世界でもっとも低い数値です。
(出典:https://www.dove.com/jp/stories/campaigns/real-beauty-id.html)

街中で10 代の女性を見て「この中でキレイなのは、、、100人中7人かな?」なんてこと、あります?
一度、客観的な検証をしてみたいくらい、現実から乖離した数値のように思えます。

もちろん、匿名で情報処理されるアンケートにおいても、日本人は謙遜した回答をする傾向があります。それを差し引いたとしても、日本人女性の容姿に対する自己評価の低さは、あまりにも著しいと言えるでしょう。

 

このように、多くの女性は“美しさ”という概念において、“客観の自己”と“主観の自己”に乖離があります。しかも、「自分は美人ではない」という“主観の自己”が、積極的なファッションやメイク、所作、その他の選択に、意識的または無意識にブレーキを掛け、“客観の自己”にまで影響を与えるという悪循環も存在することは想像に難くないでしょう。

具体的な“理想の自己”の内容は、状況や“美しさ”への諦め度合い、自己評価と他人の目のどちらを重視するか等の基準などにより違うと思いますが、少なくとも“美しい自分“はプラスのイメージとして多くの女性の理想であるとは言えるでしょう。

そんな多くの女性が陥っているは“的外れな不満”の状態に対し、「客観的に見て、あなたは美しいですよ」というメッセージを発信し続けるリアルビューティー・キャンペーンは、ブランドのイメージ向上や行動者とのリレーションシップ向上にプラスになるというマーケティング的な価値だけでなく社会的にも意義が大きい施策と言えます。

10人に6人もの少女たちが、さまざまな活動を ― (水泳、スポーツ、登校、そしてただ発言するだけでさえ )、自分の外見が好きでないという理由で諦めてしまっています」という数値の大きさからも、その社会的な損失の大きさとダヴのキャンペーンの意義は汲み取れるでしょう

上記の動画の中で、下記のように言っている女性がいます。

「いつも自分の短所ばかり気にして、良くしようとしてきたけど、もっと自分の長所を認めてあげるべきですね。」
(出典:https://www.youtube.com/watch?time_continue=8&v=E8-XKIY5gRo)

女性が”美しさ“という概念に引け目を感じるのではなく、ポジティヴに向き合い、心の底からの自信に変えてくための気付きを与えてくれるダヴの取り組み、ぜひ、これからも楽しみにしたいと思います。