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世界各国で推進されているプラスチックのゴミ削減の動き。

その中でも「プラスチック製ストロー」に関する規制が、最近急速に広まっています。

その主目的としてよく言われるのが「地球環境保護のための海洋・河川汚染対策」であり、海洋国家モルディブにも大きく関わる問題です。

モルディブにいらっしゃる方・興味を持っていただけている方はもちろん、1人でも多くの方に、是非その深刻さを知ってもらえればと思います。

「ストロー」が規制対象になる理由

海洋生物を苦しめる「棒状プラスチック製品」

世界中で多くの人が、プラスチック製ストローの残酷さを知るキッカケになった動画があります。
※約8分の動画で、目を背けたくなる可哀想な映像です。クリックされる方はご承知おきください↓

クリックをせずとも、表示されている画像が

鼻に詰まったプラスチック製ストローを取り除くために血を流しているウミガメ

であることはわかるでしょう。

いくら引っ張ってもなかなか取り除いてあげられず、8分かかってやっと抜ける頃には、赤い血の線が地面まで伸び、ウミガメもぐったりとしています。

被害にあっているのは、当然このウミガメだけではありません

他のウミガメも、魚もイルカもサメもクジラも、多くの海洋生物がプラスチック製品の餌食になり、世界中で命を落とす等の被害にあっています。

ストローをはじめとする「棒状プラスチック製品」は、そんな残酷な被害のシンボルとも言えます。

 

ストローは海洋ゴミTOP10の常連

「International Coastal Cleanup(国際海岸クリーンアップ/通称ICC)」という活動をご存知でしょうか?

「国際海岸クリーンアップ(International coastal cleanup:以下 ICC と称す)」とは,広範な市民が, 世界共通のデータカードを使用して水辺・水中に 漂着散乱するごみを回収しながら,その品目別個 数を求め,さらにはその結果から改善策を考え, 提言していこうという国際的な調査・清掃活動で, 毎年 9 月の第 3 土曜日を中心に世界の水辺,水中 で実施されている。
(出典:日本における国際海岸クリーンアップ(ICC)の現状とその結果 )

ICCのデータでは、世界中で集められた「海岸ゴミのリスト」のトップ10毎年「プラスチック製ストロー」が入っているそうです。

2050年には、海洋生物の数より海中のプラスチックゴミの数の方が多くなるとも言われていますが、その中に多くの「ストロー」も含まれ、海を深刻に汚染しているのです。

 

プラスチックは餌に見えることも

プラスチック製品が刺さったり・絡まったりする傷害だけでなく、この誤食誤飲も大きな問題です。

「死亡したイルカやクジラを解剖したら、ビニール袋など多くのプラスチック製品胃に詰まっていた」等の話は、誰でも聞いたことがあるでしょう。

そのような例と併せ、小さなプラスチック片をたくさん食べてしまっている海洋生物や、さらには分解されたプラスチック(マイクロプラスチック)を食べてしまっている海洋生物も多いそうです。

プラスチックごみは、分解されたとしてもマイクロプラスチックになる。マイクロプラ スチックの形と、海洋生物の好物である動物プランクトンは形がそっくりである。そのた め、海洋生物はプラスチック製品の粒子を自分の餌と見間違え、食べてしまう。つまり、 海洋生物はプラスチックゴミと餌を区別できないということである。

また、動物プランクトンも彼らの好物である植物プランクトンとマイクロプラスチック を間違えて食べてしまうことがよくある。マイクロプラスチックを誤食した動物プランク トンを魚が食べ、その魚はさらにサメやクジラなどのような大型の生き物の餌になる。こ のような食物連鎖により、海の生き物全体にマイクロプラスチック汚染が広がっていくと 考えられる。
(出典:海洋生物の涙 ―プラスチックの時代からの脱却を―)

プラスチックは分解されるのにも数百年かかる上に、分解された後も海洋生物を苦しめ続けるのです。

 

世界中に広まるストロー規制

国や自治体中心に規制+αが強まる欧米等

今年2018年になってから、下記のような動きがありました。

  • 2018年2月14日 台湾の行政院環境保護署が、一定規模以上の飲食業者の飲食店によるプラスチック製ストローの提供禁止を2019年に開始し、2030年までに使い捨てプラスチック製品の使用全面禁止を目指す方針を発表。
  • 2018年4月18日 イギリス政府が、使い捨てのプラスチック製ストローや飲料をかき混ぜるマドラー、プラスチックを芯の原料とする綿棒の販売を禁じる方針を発表。
  • 2018年5月28日 欧州連合(EU)の欧州委員会が、ストローや皿を含む一部の使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する方針を発表。
  • 2018年6月1日 米カリフォルニア州・マリブ市が、市内飲食店によるプラスチック製ストローの提供禁止を開始。
  • 2018年6月9日 G7サミット(カナダ)で、カナダフランスドイツイギリスイタリアEUが、プラスチックごみによる海洋汚染への対策に関する合意文書「海洋プラスチック憲章」に署名(日本、米国は署名せず)。
  • 2018年7月1日 米ワシントン州・シアトル市が、市内飲食店によるプラスチック製ストローの提供禁止を開始(予定)
  • その他、サンフランシスコニューヨークの市議会にも、市内飲食店によるプラスチック製ストローの提供禁止に関する条例案が2018年5月に提出されている。

ストロー細い形状+小ささから、ほとんどリサイクルされずにごみ箱に捨てられますので、「使わせない」という規制がキーであり、政府や自治体による動きがより重要と言えます。

一方で、自主規制を進める民間企業もあり、米資本の国際ホテルチェーン「ヒルトン」は2018年5月23日、世界650のホテルでプラスチック製ストロー使用を年内に中止すると発表。

2018年5月24日に開催された「米マクドナルド」の株主総会でも、最終的に否認されたものの「プラスチック製ストロー禁止」が株主から求められる一幕があり、6月中旬には米国内一部店舗で代用ストローの試験導入を2018年中に開始すると発表されました。

英マクドナルド」はプラスチック製ストローの使用中止計画を発表し、「P&G」「ユニリーバ」も容器製造におけるリサイクル等の目標を掲げて動いています。

また、英ファッションブランドの「ヴィヴィアン・ウエストウッド」等、ストローを使用しない業界の企業からも、プラスチック製ストローの使用中止を呼びかける声が上がっています。

反対運動も活発化しており、ロンドン中心に活動をする「ストローウォーズ」、世界的な海洋環境保護団体「サーフライダー・ファウンデーション」が推進する「ストローズ サック」、8歳と7歳の兄妹が発起人の「ワン レス ストロー」、その他にも欧米中心に多くの運動が推進されている。

 

民間主導で自主規制が広まるモルディブ

モルディブでは、リゾートホテルや旅行会社など民間企業主導でプラスチック製ストローの規制が広まっています。

また、政府としては、商業活動に影響の少ない範囲での取り組みを始めています。

  • リーティビーチリゾートは、以前からプラスチック製ストローを含む一部の使い捨てプラスチック製品を提供していない。
  • 2018年1月1日 アナンタラ(3リゾート)、ナラドゥ二ヤマの5リゾートを展開し、2019年にアヴァニブランドで1リゾートをオープン予定のマイナーグループが、モルディブを含むアジアに展開する全ホテルでプラスチック製ストローの使用を中止。
  • 2018年3月12日 教育大臣が、同年4月から、ストローを含む使い捨てプラスチック製品のモルディブ国内全校での使用中止を目指すと発表(現状不明/発表前より数校は自主的に中止済みだが、5月現在では使用している学校有り)。
  • 2018年6月5日 シークレットパラダイス(現地旅行会社)が、取引先のゲストハウスにプラスチック製ストロー提供禁止を呼びかけるキャンペーンを開始し、リリーレストグライドゥパームインバイビーモルディブスカノープスリトリーツTMEリトリートからの賛同を受ける。
  • 2018年6月8日 サマーアイランドが、同リゾートでのプラスチック製ストローの使用を中止。
  • 2018年6月14日 ヴェリガンドゥが、同リゾートでのプラスチック製ストローの使用を中止。
  • 2018年8月 カルペディエムが、同年8月からの同社保有のクルーズ船3隻でのラスチック製ストローの使用を中止(予定)。同年9月オープン予定の同社保有リゾートでも使用しない予定。

他にも自主規制を検討しているという話を耳にしますので、この流れはしばらく続くでしょう。

※2019年2月19日追記:上記以外のリゾートやモルディブのレストランでもストローをはじめとするプラスチック製品の使用中止・自粛が広がっています。ちょっと書き切れない量のアップデート…良いことですね。

モルディブ旅行を計画されている方は、是非、リゾートホテル環境ポリシーにも目を向けて滞在先選びをしてみてください。

 

私たちにできること

「ストロー要りません」を口癖に!

環境保護の目的であることが知らされていれば、飲み物にストロー付いてこなくも、それで飲める形状のモノに関しては怒る人は少ないでしょう。

それでも、お店はストローを提供してくれることがあります。

そういう時には、日本でも海外でも「ストロー要りません」と伝えましょう。

小さいお子さんがいたり等、本当に必要な方は構わないと思いますが、そうでなければ私たち一人一人断ることも大切です。

また、使い捨てのプラスチック製フォークスプーン等も、リサイクルされにくく、海に多く漂流して海洋生物を傷つけているゴミの一部です。これらの使い捨てプラスチック製品も、できるだけ使用しないようにしましょう。

 

不便のない範囲で、有害ゴミを持ち帰る

世界には、日本のようなゴミ処理システムが確立していない国がたくさんあります。

モルディブ政府は、ゴミのリサイクル促進や焼却法改善の取り組みをしてはいますが、劇的な改善にはまだ時間が必要

現システムでは、モルディブ国内で発生するほとんどのゴミが、分別さえされぬままゴミの島」と呼ばれるティラフシ島に運ばれ、そのまま焼却され、埋め立てられます。焼却前にある程度の分別はしているそうですが、十分な作業が物理的に可能とは思えません。
※興味のある方は、下記のリンク先が参考になります。5年も前の記事なので、今の方が少しマシですが。
「地上の楽園」が抱える「毒の爆弾」、モルディブのゴミの島

意識の高いリゾートは、水をガラスボトルで提供するなど様々な努力をしています。それでも、もし、「日本ならまともに処理できる有害ゴミ」があったら、不便のない範囲で日本に持ち帰ることを検討してみてください。

ペットボトルだけでなく、乾電池壊れたプラスチック製品など、「燃やしたり・適当に廃棄されたらNGでは?」と思われるモノがあったら、スーツケースの片隅に入れてあげてください。

また、アジア/アフリカ/中南米等には、モルディブと同等〜以下のゴミ処理能力の国もあると聞きます。そのような国では同様の配慮ができると良いでしょう。

 

皆んなの「気持ちのスイッチ」をONに

日本の一般的な生活環境では、環境問題を「自分事」と感じるのは難しいですよね。気持ちが向かない方が、むしろ普通。

それでも、もし「地球のプラスチック問題」に気持ちが向いた方がいたら、その気持ち&行動をぜひ他の方にも共有してください。友人、恋人、家族。私が画面越しに文字で伝えることよりも、身近な人の言葉や行動の方が強いです。

お子さんの「夏休みの研究課題」にも最適ですよ。ここ数年、世界中で動きがある問題ですから。

それから、可能であれば、ぜひ「自然の豊かな場所」へ旅に出てみてください。

モルディブをはじめとする自然豊かな国々する意義の1つが、日常では触れない「地球の生命感」を感じられること。生きている生命の美しさ・失われていく生命の尊さを肌で感じることで、環境問題への「気持ちのスイッチ」がONになることがあります。

都会にいたままでも、気が向いたら自然系のドキュメンタリーも見てみてください。

冒頭のウミガメ動画が世界中でストロー規制の波を起こしたことは、まさに、あのウミガメの生命感が多くの人の「気持ちのスイッチ」をONにしたことの現れでしょう。

一度スイッチが入れば、「自分のできること」を察知するアンテナが敏感になります。これが、持続的に環境を考える姿勢を持つ上で、何より大切です。

※日本は、6月9日のG7(カナダ)での「海洋プラスチック憲章」も署名を見送り、6月15日成立の「海岸漂着物処理推進法改正案」はマイプラ規制が努力目標。各国事情があるでしょうが、プラごみ規制に消極的な印象です。興味のある方は、微細な海洋ゴミを取り締まれ!自主規制の日本、国際社会との間に温度差が参考になります。また、「プラスチック憲章(Plastic Charter)」については、G7シャルルボワ・サミット、海洋プラスチック憲章発表。日本と米国は署名せずがわかりやすくまとまっています。

※2019年2月19日追記:日本でもプラスチック製品使用中止・自粛が広がっているようです。特に民間企業の試みは興味深く、例えば、つい先日、ファストファッションのブランド「ZARA」はプラスチック(ビニール)製のショッピングバッグの使用を中止すると発表し、紙袋のデザインをリリースしましたが「ステキ!」「こっちのショッピングバッグのが良い!」と好評。ブランディングにプラスとなる形での取り組みが盛んです。

 


 

モルディブに住んでいると、環境の変化生き物の生死人間の鈍感さに敏感になります。

ここでは、環境汚染だけでなく、温暖化や海面上昇も「見える現実」として目の前に突きつけられます。

床が海に沈んだ家。
訪れる度に海面と近くなる田舎の道。
増え続けるメスのウミガメの話(アオウミガメは卵の中にいる時の温度が高いとメスになりやすい)
真っ白に白化した珊瑚。

毎日、いろんな話を聞き、いろいろな景色を目にします。

 

伝えたいこともキリがないので、そろそろ筆を置きますが、、、

モルディブでも日本でも、どこの国にいても、

ポイっと捨てたストローで死ぬ生物がいる

という現実を想ってくれる人が1人でも増えてくれるよう願っています。

 

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